そして幸せに暮らしましたとさ

この物語はフィクションです

新しい青空を見た話

ライブ終了直後の時点では、もう私ごときが書くことは何もないなと思っていた。だって、twitterや前記事でも書いた

青を失って、青空や青い海を、そして青春を歌えるようになったももクロが、緑を失って歌えるようになるものは何なのか。ためいきを隠した草原? 生命たちが駈け巡るこの大地? 希望に涙を足した色?

という問いには、ヒャダインと4人が完璧な答え(♯15)を用意してくれてたし。青く澄みわたる空、緑あふれる大地、そこに咲く4色の花……って物語ができすぎてませんか?

 

だから「感想は後で書く」と言いつつ約一週間放置してたんだけど、無職だから金曜の昼ふと思い立ってセトリ完全再現ひとりカラオケに行ったんですよ。愛のメモリーまできっちり順番どおり入れるやつ。

それで歌詞に集中しながら改めて全曲歌ってみた結果、「あっこれは文字にしないと頭がパンクするやつだ」と思ったので、ライブの感想だか曲レビューだか分からないものを書きました。長いので小分けにして、お時間あるときにでも読んでください。

 

♯01 Z伝説〜終わりなき革命〜

その衣装でその曲は反則でしょ……としょっぱなから涙目になった。

ももクロ垢からこのブログをお読みの方には早速3段落ほど読み飛ばしてほしいんですが、この衣装とはMy Dear Fellowを歌った、そして今のところ最後の出場となってしまった2014年の紅白衣装です。事前にファンが真っ白な衣装にメンバーカラーのペンで寄せ書きをし、ももクロちゃん達がそれを着てステージに立つことで、ファンのみんなを紅白に連れて行くよ!という企画でした。いま思うとモノクロデッサンを地でいく企画だな。

でもこの年、有安杏果はインフルエンザでまさかの欠場。あの衣装どうするんだろうと心配しつつ出番を待っていたら、4人がちょっとずつ緑をまとって現れた。緑の衣装を一旦ばらして他のメンバーの衣装に縫いつけたらしい。意地でも寄せ書きは全員分ステージに連れてくぞ!という強引なまでの心意気。そして、曲が終わってカメラが司会者に切り替わる前の一瞬に、夏菜子が「次は5人で!」って叫んだ。こっちも「来年こそは5人揃って着てくれよ!」という気持ちになったのを覚えてる。

ところが翌2015年、ももクロは落選からの卒業宣言で紅白と決別してしまい、今に至ります。だから、あの緑の寄せ書き衣装を完全な形で見る機会はもう無いんだろうと思ってた。*1

そんな衣装でラストライブが始まるんだから、当時を知る者としては涙ぐむしかない。「次は5人で!」が「最後は5人で!」になるなんて思わなかったよ。で、またこの曲が涙目の人間に全力でぶつかってくる。

わたしたち泣いている人に何ができるだろう それは力いっぱい歌って踊ること!

そんなこと言われて泣きたくなかったんですが、私はすぐ後のしおりん「弱くない!」で普通に決壊しました。これが涙目のアリスの力……。

 

思い出話を混ぜたら文字数が大変なことになると分かったので、ちょっと控えます。

 

♯02 未来へススメ!

この曲から杏果が加入して6人になったんだっけ? 一人も欠けることなく同じ未来へ進んでいくんだ!と1ミリも疑ってないのが伝わる歌詞。今このタイミングで聴くと、幼さゆえの純粋さに打たれてしまう。

「どんなどんな困難でも」「いつかいつか辿り着ける」の腰を落とす振り付けで、ただでさえ小さいのに人一倍腰が入ってますます小さくなっちゃう有安さんが好きだったな、と思った。BLAST!のサビとかもそうだけど、体の軸をぶらさずに脚だけ開いたり上げたりする動きが抜群に上手いんだよね。もうあの弾むような動きが観られないのかと思うとただただ寂しい。

 

♯03 ゴリラパンチ

暗転のあと杏果がセンターに立ってて、「あっそういえばこれ卒業ライブだったわ」と再確認。古参泣かせな2曲に続けてこれが来たことに、お前ら今日は絶対笑顔で帰らせるからな!的な意志を感じた。曲の力か、やっとかげりのない声を聴けた気がしてほっとする。発表以降ずっと4人の笑顔には曇りがあったから。

このあたりで、後ろの写真が各曲リリース時のものだと気づいた。さっきまで全員あどけない写真が並んでたから、AMARANTHUS時点のお姉さん感が際立つ。そういえばこの時のソロ写真、夏菜子以外の4人の手がそれぞれトランプのマークになってるよね? しおりんハート、あーりんダイヤ、杏果スペード、れにちゃんスペード。初めて見たときから気になってたんだけど、そこへの言及を特に見つけられないまま2年経ってしまったので、とりあえずここに書いておきます。

 

♯04 仮想ディストピア

なんか、今回は夏菜子の姿がすごく印象に残った。夏菜子の歌うところをライブ映像で初めて観たとき「笑ってるのに、泣きながら歌ってるみたいな声だなあ」と思ったんだけど、それをより強く実感した。サビの夏菜子と他4人に分かれて歌うところ、ほんとに一人ぼっちで「きみ」を探してるみたいで、歌を聴いてるというより演劇を観ているような気持ちになった。

あともう一つの発見は、灰とダイヤモンドに世界観が通じてること。*2「砂漠の底から拾い上げたのは昔誰かが愛を誓ったリング」なんて「灰の中のダイヤモンド」そのものだよな。どうして今まで気づかなかったんだろう。

 

♯05 白い風

もうその全てを抱きしめてしまうのか……とライブの展開の早さに目眩がした。最後だからってもったいぶらないというか、杏果曲を終盤に固めたりしないセトリにますます好感が持てる。抑えた感じで歌われる「今なら答え出せそうだよ」に、卒業への覚悟が滲んでいたような気がした。

そして予想も期待も裏切らないクライマックスの絶唱、続く夏菜子の落ちサビで、人間の眉はこんなにも悲しげにハの字を描けるものかと思ったし、「キミとならば」で隣の杏果に向けた視線の強さに打たれた。ももかなこはガチ。

 

♯06 行く春来る春

白い風からなめらかに続く、冬→春の流れが美しい。

サビの「素直なこと真面目なこと すがしいこと正直なこと」がもう有安さんのことにしか聞こえない。QuickJapanが有安さん特集だったときの表紙、真っ正面から撮った顔と「正直すぎる瞳」というキャッチコピーに衝撃を受けたのを思い出した。飾ることを知らない(ように見える)雰囲気は彼女の魅力だと思う。

白い風と感想がかぶるけど、トロッコお手振り曲なのに、夏菜子が「君から知ったよ」を杏果しか見ないで歌うのは反則。

 

♯07 ツヨクツヨク

ドームツアー2016のたしかアマランサスの方で、杏果ドラムver.を聴いた。手元や足元にはほとんど目もやらずに、きっちりリズムを刻みながら横のマイクを向いて歌う姿がすごくかっこよくて、「ツヨクツヨク心に誓う いつか本物になることを」のあたりで「いやもう本物だよ」と思ったっけ。ツッコミながら感動する稀有な経験だった。

その時の印象が強くてすっかり杏果が主役の曲みたいな気になってたんだけど、今回はチームワークの方を強く感じた。まず、入りのれにちゃんイヤモニ不調をあーりんとカバーするところ。よく生歌礼賛の流れで動画貼られるオレンジノートとか、のど自慢のゲストで歌った泣いてもいいんだよとか、こういう突発トラブルに対するあーりんやすの対応力はすごいなと思う。子役上がりの底力なのかな?

そして、なぜか曲終わりに杏果がタオル持ってなくて、しおりんと1枚のタオルを仲良く正しい向きで広げたところ。曲のハモリや振り付けでも推され隊とりんりんコンビでそれぞれ対になってることが増えてたから、今更だけど新鮮な良さを感じた。

 

♯08 words of the mind〜brandnew journey〜

手袋がめちゃくちゃキラキラしてたのと、それを投げた後の杏果の表情が忘れられない。投げるモーションが終わって体はすぐステージに向き戻ってるんだけど、顔というか視線はずっと手袋の行方を追ってて、やがて見届けたよって言うようにあごをくっと上げて走り出すの。あれは円盤化されたらもう一度見たいな。

 

♯09 BLAST!

夏菜子じゃないけど、2020年の東京オリンピックは5人でこの曲をやってくれるものだと信じてた。ロンドンの年のPUSHと一緒で五輪のイメージが重なってるから、別に色にちなんだ歌詞とかないのに、これから緑なしの4人でパフォーマンスするところが想像できない。

Abema在宅参戦だったのでライブ開始前にMVも観たんだけど、「ごちゃごちゃ今は全て捨ててこう 積み上げてきたもの振り絞ろう」は今回のライブに対する意志表明だと受け取りました。たとえ今後もテレビで披露する機会がなかったとしても、自分たちのために歌い続けてほしい。

 

♯10 DECORATION

AbemaTV公式twitterの「最後にももクロ5人で歌ってほしい曲」をつぶやく企画でも迷わずこの曲に投票したものの、まさか本当に聴けるとは思ってなくて、この曲が始まったときは本当に興奮した。だってつぶやいた後、同じこと考えてる人どれくらいいるのかな〜って検索したら、3人くらいしかいなかったもん。いや、分かるよ。怪盗少女やZ伝説やモノクロデッサンにあるような「この5人じゃなきゃ」って感じは正直薄いし、ピンキージョーンズやDNA狂詩曲やLinkLinkみたいな応援歌でもないし。

でも私はあの日これを聴きたかった。歌詞が今の5人にあまりにもぴったりだったから。特に2番冒頭のシンクロ率すごくないですか? 感想の代わりに引用しときます。

(杏果)でっかい宣言のプレッシャー深呼吸で挽回モード

(しおりん)結構わたし上手いことカバーできるとか思ってる

(れに)一刀両断ズバッと歯に衣着せず豪快に

(あーりん)でもちょっと笑顔で「ね?」ってフォローできればOKです

夏菜子)おりこうさんびゃく六十五日 弱気な自分見せられない

(杏果)好きでもないなら誰の夢なの そつない自分になりたい時流に流されてんじゃない?

 

♯11 行くぜっ!怪盗少女

原点回避・断固拒否!って言い切った直後にこれ持ってくるのが粋ですよね。圧倒的な披露回数に裏打ちされた安定のパフォーマンスで、正直その場で新しく感じることは特になかったんだけど、数日後に聞いた音源でちょっと感想が変わった。

「普通の女の子」なんだよなあ。  

 

♯12 灰とダイヤモンド

杏果の「一緒にいない私たちなんて二度と(想像もできないよ)」〜「砂にまかれても」を聴かせるための選曲だろうけど、夏菜子の「熱いアザをのこして 次の空めざした」にもぐっと来てしまった。アザと聞いて思い出すのはミライボウルの2番Aメロ。

ピンクのハート 真っ赤にもうすりむいてもいいのよ

青春のアザ 紫に残ってても

黄色い声でね告白を ユメミドリーム色々女子はね大変だ

「青春のアザ」を歌った青ことあかりんはこのシングルをもって卒業し、女優という次の夢、もとい次の空へと進んでいった。見送った側には悲しみがアザのように残り、時間とともに少しずつ薄れていった。もう見た目にはアザがあったことも分からなくなったところで、新たな衝撃にまたアザができた。たぶん、まだ熱いぐらいに痛いんだと思う。*3

 

♯13 走れ!

これも怪盗少女と同じ理由で、特にないと言えばないんだけど、これだけ書かせて。

一瞬暗転してトロッコの上の姿が見えなくなったとき、他のサイリウムが観客と握手するように小さく揺れながら光る中、ピンクのサイリウムだけが左右にぶんっぶん大きく振られてて、「それでこそ私の推し……」と思いました。

 

♯14 モノクロデッサン

白状すると、この曲を歌としてちゃんと聴いたことがなかった。「情熱=赤、希望=黄、涙=青」「情熱+涙(不安や孤独)=紫、希望+涙(疲れ)=緑」「恋=ピンク」っていう対応が見事すぎるから、上手いこと言うなあ〜みたいな感心が先に立っちゃって、あんまり全体を聴けてなかったんだと思う。ライブだと歌詞や近くに来てくれてるメンバーに合わせてサイリウムの色変えるので忙しいし。

でも今あらためて聴いてみたら、杏果の「疲れたら一休みしてまた歩き出せばいい」が自分に言い聞かせてるようでしみじみするし、かと思えばユニゾン「どの色が欠けてもこの夢の続きは描けないから」に(そうだそうだ!休むなんて言わないでよ!)とまた感情が高ぶるしで、とてもとても響く曲だった。

 

♯15 新しい青空へ(ありがとうのプレゼント)

こういうパーソナルな曲を作らせたらヒャダインの右に出る人はいないなと思う。私は杏果がいろいろ名曲をカバーした中でユーミンひこうき雲が一番だと思ってて、このライブの前にも聴き返してたから、「空が好きだったあなたへ」というフレーズだけでちょっと思い出し泣きした。

歌う人が変わるたびに体ごとそっちを向いて、途中で客席とありプレを合唱するところではイヤモニを外して聴き入る杏果の姿が本当に尊かった。

その凛とした姿勢は4人からのコメントのときも同じ。れにちゃんが「これからも友達でいてください」と言った瞬間、ハグに入る寸前に、きりっとした顔のまま左手でピースサインを出した杏果がこのライブの個人的ハイライトでした。

あとは、年少勢が「辞めてよかったと思えるくらい幸せになってね、辞めなきゃよかったと思わせるくらい頑張るから(あーりん)」とか「エゴサしなくても話題が入ってきちゃうくらい活躍するね(しおりん)」とか、良くも悪くもメディアに切り取られて見出しにされるのを超意識してコメントする中、夏菜子がめちゃくちゃ歯切れ悪く口内炎の話から入ったのが笑って泣けた。

 

♯16 あの空へ向かって 

杏果がステージを去って、左端のパネルにライブタイトルが下りてくる演出で鳥肌。室内のライブだと特に、動画やライトを駆使した派手な映像演出に慣れてたから、過去写真のみのほぼ静止画であそこまで意味を持たせられるとは思わなかった。

初めて他の誰かが杏果パートを担当するということで、画面越しでも伝わるライブ会場の張り詰めた空気。だけど曲が始まるとすぐに、じわじわ大きくなるあーりんコールに氷が解けるような感覚を覚えた。新曲が出るたびコール案とか真面目に論議する人たちを、どっちかというと「いや歌を聴きなさいよ歌を」って冷めた目で見てしまう心の狭いオタクなんだけど、たぶん初めて「コールって大事だな」って感じた。

アイドルは好きだけどドルオタは別に好きじゃないから、なんなら現場よりLVやDVDで観る方がパフォーマンスに集中できていいな〜って最近思ってました。でも、大げさだけど、ライブは演者と観客の双方向的コミュニケーションの場なんだということを確認できた気がします。やっぱり「行けるときに行っとけ」は真理だし、そのためのお金は惜しみたくないから、無職もそこそこにしておかないといけませんね。

 

振り返ると、こんなにも心揺さぶられながら2時間半のライブを堪能したのに、ラスト5秒で感想を「GTにならなくてよかった〜〜〜〜!」に塗り替えられてしまったのが悔しいです。とりあえずベストアルバムと東京ドームすごい楽しみ。

*1:メンバーのブログとか読むと、「ももクロは」を主語にするのも違うかなと思うけど……。いつかまた紅白出場が決まって、4人が「卒業したので再入学しまーす!」とか言ってランドセル姿で会見やってくれると信じてる

*2:只野さん自身がどこかでお話されてそうなので、掲載誌などご存知の方は教えてください

*3:「アザ」の他にも、曲をまたいで頻出するワードがももクロには多い気がする。「空」は言うまでもなく、「荒野」「本能」「リボン」とか。形態素解析じゃないけど、このへんデータ分析して視覚化したらおもしろそう